群萌-ぐんぼう-

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家具職人の新井さんに会いに行って来た

こんにちは 群萌-ぐんぼう-の阿久澤です。

地域の人に会いにいくシリーズの第1回です!

先日、家具職人の新井さんご夫妻に会いに行ってきたので書いてみたいと思います。

まずは新井さんのプロフィールをご紹介します。

【プロフィール】新井 宏(あらい ひろし)

昭和15年生まれ、現在83歳。昭和30年に中学を卒業と同時に家具職人の道に入る。前橋市で様々な種類の手作り家具を製作する家具店を経営。75歳で店を廃業。現在も趣味で木工作品を作り続けている。

新井さんの経営していたお店は現在廃業されていますが、群萌の会員さんのお知り合いということで、工房を見学させていただきました。

まずびっくりしたのがコチラ!

f:id:gunbou-gunma:20231207164345j:image↑壁にヤモリがいるーーー! 

 

f:id:gunbou-gunma:20231207164523j:image↑木彫りのヤモリだった…

新井さんの奥様によると、ヤモリをお友達にあげるときに、こっそり壁に付けたところリアルすぎて新聞紙でくるんで捕まえようとした方もいるそうです…笑

現在は、ご趣味で手彫りのヤモリや小さい天狗を作っているそうですf:id:gunbou-gunma:20231207164025j:image↑カワイイ天狗ちゃん…


f:id:gunbou-gunma:20231207164021j:image↑天狗の製作工程

これまたびっくりの手作りの仕掛け扉も。f:id:gunbou-gunma:20231207164005j:image↑扉の取っ手が木彫りのカナヅチ

 

f:id:gunbou-gunma:20231207164009j:image↑扉の内側

開けると内側にはノコギリとカンナが隠れてた!

次々と出てくるユーモアセンスたっぷりの作品にワクワク…

 

f:id:gunbou-gunma:20231207190140j:image↑木彫りの家紋 立体的だとまた印象が違う

 

新井さんは、椅子やタンス、仏壇、扉などいろんな家具を作る職人さんです。一種類に限定することなく、作り方を独学で習得し、経営を続けてきたそうです。その理由は、一つの家具を専門にすると、時代が変わって需要が無くなったときに対応できなくなってしまうと見込んでいたから。(たとえば…昔は伊香保などの温泉街で木製火鉢が使われ、火鉢職人も前橋市内にたくさんいたけれど、石油ストーブが普及し火鉢職人は職を失ってしまったらしい)

そんな新井さんが廃業を決意したのは75歳の時。作った家具は地域の家具屋さんに卸していましたが、そうした家具屋さんは大型家具量販店の台頭により、時代が進むにつれどんどん廃業していったそう。

また、家具に使われる国産材も減り、山師(ヤマシ:木材を売買して工房に持ってきてくれる人)も姿を消していきました。こうした時代の流れによる「売り先」の変化だけではなく「仕入れ先」の変化もあり、廃業を決意されたそうです。

新井さんの言葉で印象的だったのは「家具量販店で買う時は、後でどうするかはなく、今使うためだけに買う人が多いんじゃないのかなぁ。それと、親から子に引き継がれる家具も無くなってしまった。」という言葉。

確かに自分を振り返ってみると、家具だけでなく服やお皿など、「自分の買おうとするモノ」がどのくらいもつのか、買った後も大事に使い続けたいかどうか を考えていないかも…と気づきました。「あ、安いし欲しかったから買おう 壊れたらまた買えばいっか」みたいな感覚が当たり前になってしまっている自分もいますね。今回のように手作りの良さに気づく自分もいます。

 

夫婦二人三脚だからここまでやってこられたと話す新井さんと奥様。f:id:gunbou-gunma:20231207213844j:image

作業台の裏にはご本人と奥様の生まれ月の守り本尊が彫られています。

f:id:gunbou-gunma:20231207211659j:image↑作業台の裏 上は普賢菩薩、下は大日如来

ところで、現在83歳の新井さんですが、最近スマホユーザーになられたそう。使い方を攻略するのに1ヶ月半かかったそうですが、なにより「職人だから、家具の作り方を自分でわかるまでやらないと気が済まない性格。スマホを覚えるときも同じでわかるまでやってみることで覚えられた」そうです。さすが職人魂....

 

最後に見せていただいたのがこのタンス。新井さんが骨董屋で見つけた明治時代の版木を使って、タンスに仕立てたものです。版木も珍しいけど、版木のタンスも珍しい!

引出しを触らせてもらったときに、とにかく引出しやすく、スーッと動いて摩擦がほとんどないことにびっくり!普段私が使っているタンスでは味わったことのない感覚です… f:id:gunbou-gunma:20231207213000j:image↑版木


f:id:gunbou-gunma:20231207213010j:image↑この版木で印刷したもの


f:id:gunbou-gunma:20231207213006j:image↑版木を使ったタンス

手作りの良さって、デザインだけでなく機能にも現れるものなんだなぁと実感しました。こうした職人さんは、どんどん減っていると聞きます。技術がなくなってから取り戻すのはとても難しいことですよね。普通の消費者の私ですが、そもそも自分達が手に取るものを選ぶことが、技術を守ることにつながっているのかもしれないなと思います。

新井さんご夫妻、ありがとうございました。